アキ「私、遊星が食事している所一度も見た事ないんだけど?」
龍亞「俺も俺も。もしかして遊星って改造人間でご飯食べる必要ないのかな?」
龍可「龍亞、テレビの観すぎ。そんな訳ないでしょ」
アキ「実際の所どうなの、クロウ?」
クロウ「いや、遊星だって人間だからちゃんと飯は食ってるよ。まあ比較的小食の方ではあるけどさ」
クロウ「ただ何かやってると……例えばDホイールの整備や新型パーツの開発なんかしてる時は集中し過ぎて食事を抜かす事が多々あるかもな。
遊星が食事してるイメージが少ないのはそのせいもあるんだろうぜ」
アキ「ちょっと、そこは同居人であるあなたやジャックがちゃんと注意しなさいよ。
もし遊星が栄養失調で倒れたら貴方どう責任取るつもりなの?」プンスカ
クロウ「責任って……ジャックは知らねえけど俺は気づいた時には何か食べとけよって声くらいは掛けてんだぜ?
でもあいつ「ああ」って言うだけで結局そのまま作業続けちまうし……」
アキ「それじゃあ意味ないでしょ!」テーブルドン
クロウ「わ、悪い」ビクッ
アキ「まったく、それにどうせ食べるとしてもカップ麺とかインスタント系がほとんどなんでしょ?
それじゃ絶対に何時か体を壊すわ。もっと栄養バランスを考えた食生活を送らせなさいよ」ガミガミ
クロウ(何で遊星の食事の事で俺が怒られてんだろ……)
龍亞「(ヒソヒソ)相変わらず遊星の事となるとアキ姉ちゃんは怖いね~」
龍可「あはは(苦笑」
アキ「そこ、何か言った?」ギロリ
龍亞「あ、いや、何でもないよ。ていうかそんなに心配ならアキ姉ちゃんが遊星に何か作ってあげればいいじゃん」
アキ「え、私が?」
龍可「確かにお弁当とか作ってあげたら遊星きっと喜ぶわよ。龍亞にしては良い考えね」
龍亞「俺にしたらって何だよ」ブー
クロウ「アキは料理上手そうだしな。あ、勿論その時は俺とジャックの分も作ってくれるよな?」
アキ「だ、駄目よ! だって私……」
遊星「ただいま」ガチャ
龍亞「あ、遊星お帰り」
龍可「あれ、ジャックと一緒じゃなかったの?」
遊星「途中で別れた。寄る所があるらしい」
クロウ「あの野郎、また高いコーヒー飲んでんじゃねえだろうな?」
遊星「向かったのはカフェの方ではなかったと思うが……それより四人で盛り上がっていたみたいだが何の話をしていたんだ?」
龍亞「そうそう、実はアキ姉ちゃんが遊星に、むぐぅ!!」
アキ「な、何でもないわ! ただのちょっとした世間話よ、遊星が気にする必要はないわ!」アセアセ
遊星「そうか」
オムライス
バナナ
イチゴ
牛乳
チョコレート
おにぎり
愛情弁当
アキはオムライスとチョコが大嫌い
僕は人間ですアピールが半端ないな
遊星子供みたいだな
親を早くに亡くした遊星が、と思うと……
アキ「あ、私急用思い出したから今日はもう帰るわね! 遊星もみんなもまたね!!」ノシ
遊星「ああ、気をつけて帰れよ」ノシ
龍可「龍亞、大丈夫?」
龍亞「ケホッケホッ……いきなり口押さえられてびっくりしたよ、もう」
クロウ(押さえ付けられた時、思いっ切りアキの胸が龍亞の後頭部に当たってた……正直羨ましい)
遊星「…………」
十六夜邸……
アキ(まったく、遊星にお弁当を作ってみたらどうかだなんて……)
アキ(そりゃ作れるものなら作ってあげたいけど……正直紅茶は入れられても料理なんてほとんど作った事ないのよね)
アキ(出来てレンジでチンするか、お湯を入れるかで……うぅ、私もクロウに偉そうな事言えないじゃない)
アキ(けど……)
龍可『遊星、きっと喜ぶわよ』
アキ「(ボソッ)……本当に喜んでくれるのかしら?」
アキ「…………」
アキ「……よし、作ろう」
アキ「遊星は私達の要ですもの。もし倒れたらジャックやクロウ達だって困るはずだわ」
アキ「それに遊星には日頃からお世話になってるし、純粋にお礼という意味で作ってあげるのも決して悪くないはずよ」
アキ「そうよ、だから下心なんかこれっぽっちもないわ。そもそも私が遊星に下心を抱く必要もないしね!」
アキ「…………」
アキ(……一人で何騒いでんだろ、私)///
アキ(さて、そうなると問題は料理のやり方よね……やっぱり料理が得意な誰かから教えて貰うのが一番かしら?)
アキ(身近な相手だとママだけど、急にお弁当作るなんて言ったら変に勘繰られそうなのよね。
この前もパパと一緒に「最近遊星君とはどうなの? 何か進展あった?」なんて聞いてくるし)
アキ(龍可は料理得意だって話だけど、さすがに小学生に教わるのはちょっと……)
アキ(出来れば年上の人が良いんだけど……あ)
アキ「深影さんとかどうかしら?」
アキ(深影さんなら人生経験豊富そうだし、それに『あのジャック』の世話係を勤めていたほどの人だわ。
きっと料理も得意なはずよ)
アキ(この時間なら今はセキュリティ本部かしら? さすがに仕事中に頼みに行くのは悪いわよね)
アキ「…………」
アキ「……いえ、今は遊星の健康がかかったある意味で緊急事態だわ。すぐに会いに行きましょう」ダッ
ネオ童美野シティ・セキュリティ本部……
アキ「え、深影さん今日お休みなの?」
牛尾「どうやら風邪を拗らしちまったみたいでな、昨日から休んでんだ。
今朝パトロール中にたまたまジャックに会った時には伝えたんだが聞いてないのか?」
アキ(そういえば遊星、ジャックとは途中で別れたって言ってたけどもしかして……)
牛尾「何か伝言あるなら伝えておくぜ。早くても明日になるだろうがな」
アキ「い、良いわ。そんなに大した用事じゃないから」
牛尾「そうか。あ、悪いが飯にして良いか?
深影さんが居ないから色々と忙しくてな、昼飯まだなんだよ」
アキ「ええ。私もすぐに帰るから」
アキ(風邪ではしょうがないわね。他に頼めそうな人は……ん?)
アキ「牛尾さん、お昼はお弁当なのね」
牛尾「見ての通りそうだが?」
アキ「……彼女出来たの?」
牛尾「何だ、嫌味か。残念ながら俺のかっこ良さに気付いてくれる女はまだ現れてねえよ」
アキ「でもそのお弁当、手作りよね?」
牛尾「自分で作ったんだよ」
アキ「えぇ!?」
牛尾「そこまで驚く事ねえだろ」
アキ「驚くわよ! 彩りも鮮やかで全体のバランスも良くとっても美味しそうだし……ウィンナーはちゃんとタコさんで、おまけにタッパに分けてデザートのフルーツまで用意しているなんて!?」
牛尾「別に良いだろうが。食後のデザートは健康の秘訣なんだよ」
アキ「とてもそんな分厚い手で作られたとは思えない出来だわ……牛尾さん、料理得意だったのね」
牛尾「と、得意って訳じゃねえよ。一人暮らししてたらこれくらい作れる」テレッ
アキ「ああ、独り身の期間長そうですものね」
牛尾「女でもぶん殴るぞ、畜生」
学生時代家庭科の成績良かったのかね
満足に決まってるだろ
組員の健康管理はリーダーの勤め
やっぱりファッション兼料理担当だったのかな
ジャックはこの頃から何もしてないのか
アキ(でも凄い出来だわ。こんなの食べさせてあげたらきっと遊星も……)
牛尾「う~ん、これくらい簡単に作れると思うんだけどな」
アキ「……本当に簡単に作れるの?」
牛尾「ん?」
アキ「牛尾さん、折居って貴方にお願いがあるんだけど……」
…………
3日後……
クロウ「遊星、俺仕事行ってくるからな」
遊星「ああ」カタカタ
クロウ「仕事熱心なのは良いけど、昼飯くらいはちゃんと食べとけよ」
遊星「ああ」カタカタ
クロウ(また生返事かよ……)
クロウ「じゃあな。多分今日も夕方には戻るぜ」
遊星「ああ」カタカタ
遊星「…………」カタカタ
遊星「…………」カタカタ
遊星「…………」カタ
遊星(よし……一先ずはこんなもんか)
遊星「ふぅ~……ん?」グゥー
遊星(そういえば昨日の朝から何も食べていなかったな。集中していて全然気付かなかった)
遊星(ちょうど昼か……さすがに空腹だな。何かないかな?)ガサゴサ
遊星(お、ピリ辛レッドデーモンズヌードルか。よし、昼飯はこれで……)
『勝手に食べた奴はアブソリュート・パワーフォースする J』←マジックで書かれてる
遊星(……止めておこう。しかしどうやらカップ麺はこれだけの様だな)ガサゴサ
遊星「外に食べに行くのも金が掛かるし……仕方ない」
…………
アキ(遂に、遂に出来たわよ! 対遊星用のお弁当が!!)
アキ(まだ見た目がちょっとだけ悪いけど栄養のバランスと味は問題ないはずよ。ちゃんと味見もしたし)
アキ(思えば長い戦いだったわ。
この3日、仕事以外の時はずっと付き合ってくれた牛尾さん、本当にありがとう。でも全然簡単じゃなかったわよ?)
アキ「とにもかくにもこれで準備は整ったわ! 待っていなさい、遊星とその胃袋!!」フンス
アキ「…………」
アキ「……ちょっと気を落ち着かせる為に深呼吸しときましょう」スーハー
アキ(さて、あっという間にガレージに着いたわ)
アキ(時間もお昼にはちょうど良い頃ね。まだ何も食べてないと良いんだけど……それは心配し過ぎか)
アキ(遊星、喜んでくれるかしら?)
…………
遊星『ありがとう、アキ。美味しいぞ』モキュモキュ
…………
アキ「……エヘヘ♪」